はじめに

文部科学省の調査により、2019年度の国公立大学入学者を選抜する入試で、AO入試と推薦入試を行う大学がともに過去最多になったことがわかりました。(文部科学省のサイトはこちら)最近の推薦入試は社会人推薦や自己推薦、指定校が塾や予備校だったりと変化しています。AO入試・推薦入試とはどのようなものか、今一度確認しておきたいと思います。

AO入試とは

AOとはアドミッションズ・オフィス(入学管理局)の略です。大学の入学管理局による選考基準に基づき、高校の成績や小論文、面接などで人物を評価し、入学の可否を判断する選抜制度です。推薦入試と異なり高校の推薦がなくとも自由に応募できます。日本では1990年に慶応大湘南藤沢キャンパス(SFC)が、日本で初めてAO入試を導入しました。

 AO入試については次のような理由から「大学生の学力低下につながっている」という声もあります。

  • 早めに合格が出るため大学入学まで勉強しない
  • 定員確保のため極度に学力の低い学生でも合格するようなAO入試を実施する大学がある
  • 学力試験を課さないところもある

 一方で大学側の評価として、早稲田大学政治経済学部では次のように自己評価しています。

  • 多様な経歴、能力、資質、個性をもつ入学者の選抜を可能にし、学部の教育環境の活性化に大きく貢献している
  • これらの入学者の入学後の学業成績も、一般入試による入学者に比べ概ね良好である

推薦入試とは

主に出身校から推薦を受けた学生を選抜して入学させることです。選抜の基準は学業だけでなく、スポーツや芸術なども含まれます。推薦入試には次のようなものがあります。

  1. 指定校推薦
    • 大学等が指定校に推薦枠を与える
    • 指定校が生徒の選抜を行う
    • 選抜された生徒に大学等が面接などの試験を行う
    • 近年では塾や予備校に対して推薦枠を設けることもある
  2. 公募推薦
    • 大学等が全国の高校を対象にする(出願できる高校は指定されていない)
    • 学校長など肉親以外の推薦が必要
    • 面接、小論文、学力試験などで合否を判定する
  3. 自己推薦
    • 自分で自分の能力をアピールする
  4. 社会人推薦
    • 2〜3年程度以上の社会経験を積んだ社会人のための入試制度

 自己推薦や社会人推薦、指定校が塾や予備校も対象になるなど、推薦入試は多様化しています。

まとめ

 AO入試も推薦入試も学力が問われない場合もありますが、文部科学省は2021年度からAO入試に学力試験を義務付ける方針です。また、入学前教育を実施する大学もあるとのことで、今後さらにAO入試・推薦入試の環境は整い、増えていきそうです。適切にAO入試や推薦入試が実施されれば、大学側は学力だけでなく総合的に人物を評価でき、今後の伸びしろをみながら受験生を選抜できます。

 AO入試や推薦入試に限らず、1点刻みの試験で評価されるだけではなく、多面的・総合的な人物評価が社会に広がれば、より暮らしやすい世の中になりそうです。入試が変われば教育が変わり、教育が変われば人が変わり、人が変われば社会が変わっていく。時間はかかりそうですがより良い社会を実現していきたいですね。